2014年9月14日日曜日

残念だったベルリンフィルの公演

 ペーター・エトヴェーシュ(と読むのかどうか不明)指揮、ベルリンフィルの演奏会、今回のベルリン滞在でで聴く唯一のベルリンフィルの演奏会なのに、とても失望した。

 前半はリームの"IN-SCHRIFT"2とエトヴェーシュ自身の作品、バイオリン協奏曲第2番。独奏はパトリシア・コパチンスカヤ。まあ、現代曲は理解できないにしても、演奏さえ面白ければ聴いていられる。リームは重い作品が多くてあまり好きではないが、ザルツブルクで聴いた"Lichtes Spiel"は気に入った。またコパチンスカヤはお色気むんむんのタイプではなく、白い清楚なドレスを着て跳んだりはねたりの楽しくて軽やかな演奏をするタイプだった。彼女には大変良い印象を持った。

 ところで今日の公演で一番不満を覚えたのは後半のブラームス作曲、シェーンベルク編曲のピアノ四重奏第一番ト短調である。私自身この曲のピアノパートを手がけたことがあるので、作品はかなりわかっている。オーケストラ編曲版も非常に優れた作品だと思っている。オーケストラ版は原曲とは異なる曲だと私は考えている。

 問題は、メンバー。私のお気に入りのメンバーたちが出て来ない。チェロのクヴァントおじさん、クラリネットのフクス、ホルンのドール、そして前半はティンパニなしだったのでライナー・ゼーガースも出なかった。何よりも残念だったのは、スタブラーヴァ、樫本の両コンマスの姿がなかったこと。新しく任用されたと思われるアメリカ人コンマスだけがでてきた。この人のソロは大変美しく、満足できるものだった。

 よく考えてみるとベルリンフィルは18日から連続でシューマンとブラームスの全交響曲のシリーズを演奏する。メインメンバーはそちらにとっておいて、今日はいわば二軍といえば失礼、1.5軍ぐらいのメンバーで演奏したのではないか。

 一応定年退職したはずのフルートのブラウがでて、見事な技を披露したことと、オーボエのジョナサン・ケリーがいたことは幸いだった。

 しかし、それ意外のメンバーは第一線の、ラトルの手兵たちではなかったように思う。

 とにかくアインザッツが悪いし、アンサンブルも乱れる。あと、決定的に音が良くなかった。ザルツブルクで聴いたベルリンフィルはこんな音ではなかった。第一楽章も最初テンポが定まらず、落ち着かなかった。全般にテンポが少し速すぎるように感じた。いや、実は速くないのにそう感じさせる演奏だったのかもしれない。

 第4楽章は指揮者がハンガリーの出身だけに激しい演奏を聴けると期待したがこれもかなりハズレ。

 いずれディジタル・コンサートホールに今日の演奏が登録されるから、それを聴いてからまた詳しいことを書きたい。

 さらにがっかりだったのは聴衆がいつものレベルではなかったこと。チケットの半額セールを行ったりしてとにかく客席を埋めようとしたものだから、おのずと聴衆のレベルは下がったと思われる。第1楽章の後で拍手が起きたのはとても奇妙だった。チャイコフスキーの「悲愴」の第3楽章の後に起きるのはままあることだが、ブラームスのここで拍手とは、よほど曲を知らない人がいたのであろう。

 あまり失望した話ばかり書きたくないので、これで終わりにしますが、ベルリンで聴いたベルリンフィルがこれだったのでとても心残りです。18日以降のシューマン・ブラームスシリーズが始まる時に帰国せねばならず、本当に残念です。