2013年4月16日火曜日

インターネットで追っかけ(笑)


アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の4月10日のの演奏会の録音をradio4.nlで聴きました。

昨日はマリス・ヤンソンス指揮で4月12日の演奏会、ワーグナーのオペラから、「マイスタージンガー」と「ロ-エングリン」序曲およびブルクハルト・フリッツのテノールとエーファ・マリーア・ヴェストブレックのソプラノでいくつかのワーグナー作品を聴きました。

ワーグナーといえば、先月ベルリンのシュターツオーパーで「神々の黄昏」を聴こうとしたのですが、体調が悪すぎて一幕でギブアップして逃げ帰ってしまいました。調子の悪い時にソプラノの叫び声はとても耐えられなくて... しかし、今日聴くと全然ワーグナーを負担に感じませんでした。いや、それどころか、すばらしい!

不思議です。

ヴェストブレェックは現代アメリカの作曲家ターネッジ(Turnage)の「アンナ・ニコル」をDVDで見て以来好みのソプラノですが、ブルクハルト・フリッツ(Burkhard Fritz)は全く知りませんでした。
柔らかく、雑音の混じらない声の持ち主で、強い高声をあまり好まない私にとっても好ましい演奏でした。今後注目しようと思います。


この2週間ほど指揮者マリス・ヤンソンス(+バイエルン放送響およびアムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団)をブリュッセル~モスクワ~サンクトペテルスブルク~アムステルダムと「放送」と放送局のホームページで追いかけましたが、ヤンソンスはとても70歳とは思えない精力的な活動ぶりでした。

ブリュッセルではモスクワ行きの飛行機二機のうち一機が欠航になり、メンバーの一部が当日の明け方にモスクワに到着するというハプニングがありながらも万雷の拍手喝采を浴びる演奏会を開くくとができたのでした。

モスクワ公演のあと、休みなくアムステルダム公演を二日連続で行いました。ここでオーケストラがコンセルトヘボウに交代したのですが、どちらのオケもヤンソンスは完璧に把握しているという感じでした。今回はじめて聴いたヤンソンスのワーグナーは想像がつかないほど充実したものでした。

ここに至ってやっと私にあった好みの指揮者を見つけたという感じです。無条件に好きな人ってなかなか見つかりませんよ。:-)

ピアニストでは、若い頃からクリストフ・エッシェンバッハが誰よりも大好きだったのですが、指揮者としての彼は必ずしもその個性と音楽性をうまく活かし切れていないと感じることがあり、聴くことが少なくなっていました。もっとも、去年もザルツブルクでマティアス・ゲルネの共演ピアニストとして聴きましたが。

ヤンソンス(+アムステルダム・コンセルトヘボウ交響楽団)は2010年以来毎年9月にベルリンで一回聴いています。そのわかりやすい棒さばきと精緻で堅固な音楽作り、そして圧倒的な音楽的献身に心を打たれます。それに指揮姿が何とも美しい!

加えて、この指揮者の言語能力の豊かさには驚きます。ソビエト連邦下のラトヴィア出身、13歳からレニングラード(現サンクトペテルスブルク)育ちといことなのでラトヴィア語とロシア語は完璧でしょう。インタビューとプローベの様子をいくつか聴きましたが、ヤンソンスはドイツ語でも英語でも自由自在に音楽について表現することができるのです。

私はインタビューで"You know."ばかり繰り返す指揮者は尊敬しません。インタビューでもプローベでも内容のぎっしりつまった話し方ができる指揮者(いや、音楽家すべて)が好きです。

指揮者と声楽家の言語能力には天才的なものがあると感じています。というか、そうでないと世界的な指揮者、声楽家をやっていられないのでしょう。この話題についてはまた別の折に書きます。

学校時代から好きな演奏家の公演にはある程度無理しても出かけていたのですが、まさかザルツブルク音楽祭やベルリン音楽祭に実際に行けるようになるとは思ってもみませんでした。

そしてインターネット放送の充実した今、実際に演奏家を「追っかけ」なくても、放送で追いかけられるのです。何と楽しいことでしょう!

しかし、日本でヨーロッパの演奏会を聴こうとすると昼夜逆転しますので、これもウィークエンドの趣味にとどめたいと思います。

インターネットのおかげで、「追っかけ」ができる時代になったのです。


2013年4月8日月曜日

演奏旅行は大変なんだ!

バイエルン放送交響楽団(マリス・ヤンソンス指揮)がヨーロッパ~ロシア演奏旅行を終えた。

その旅行の模様を報告したページを読んで驚いたこと --- 演奏旅行ってすごく大変なんだ!

http://www.br.de/radio/br-klassik/so-tournee-2013-fruehjahr-100.html


上記の記事によると、オケのメンバーはブリュッセル公演を終えてモスクワに向かうことになっていた。メンバーはふたつのグループに分かれて、別々の飛行機に搭乗するはずであった。

ところがいざという時になって二機のうち一機が欠航になってしまった。

半分のメンバーだけではコンサートはできない!どうやって翌日までにモスクワに行けばいいのか?

まずメンバーをいくつもの小さいグループに分割し、ブリュッセルからヨーロッパの空港を何か所も乗りかえながらモスクワに向かわせた。

「トランペット・ソロのマーティン・アンゲラーはチケットに書いてあることがほとんど理解できない。17:30までブルッセルで待機して、まずミュンヒェンに飛び、そしてそこで再び時間待ちをして乗りかえる。『モスクワ到着は夜中の3時半。それからまたバスで走る。ホテルにチェックインするのは午前5時。その上この日の夕方にはいいコンサートをやらねばならない。今はここでとにかく待つことにしよう。きっと楽しいだろうさ。』」

演奏会の様子はライブ中継され、私も前半を聴きました。後半は録音してあります。

モスクワで2日間公演した翌日はサンクト・ペテルスブルク公演。Facebookで読んだ記事によると、トラック二台に楽器を積み、メンバーのほうは無事到着したとのこと。

そしてヨーロッパ演奏旅行の最後を飾るサンクトペテルスブルク公演は、ベートーヴェンの第5交響曲とベルリオーズの「幻想交響曲」。

http://mediathek-video.br.de/B7Mediathek.html?bccode=both

上記のサイトで左上の番組検索窓に PetersburgあるいはJansonsと入れると動画が現時点ではまだ出て来ます。(Jansons in Sankt Petersburg, 04.04.2013, 22:30)

さて、サンクトペテルスブルク公演を終えたバイエルン放送響のメンバーはたぶん帰国したと思いますが、マリス・ヤンソンス先生は今度はアムステルダムで行われるコンセルトヘボウ管弦楽団の創立125周年記念の演奏会のためにアムステルダムに向かったそうです。(ご本人がFacebookに書いてました。)

演奏旅行は本当に大変ですね。世界中を行脚する指揮者には休みなんてないのでしょうね。

マリス・ヤンソンス、70歳とはとても思えない活躍ぶりです。

11月にはコンセルトヘボウ管弦楽団と一緒に日本に来るので何とかして東京公演(日本公演は東京、川崎のみ)に乗り込みたいと思っています。






2013年4月4日木曜日

理解するのに30年以上かかった作品


もう30年以上も昔の話ですが、ドイツで勉強して(=遊んで)いた頃の話です。

学生寮でお茶会があっておよばれにあずかりました。招き主のヴォルフガング君が突然、

「そうだ、キョーコが来ているから今日は僕が世界一美しいと思う音楽を聴かせてあげるよ。」

と言ってレコードをかけてくれました。(何で私がいることと世界一美しい音楽をかけることが関係あるのかいまだにわからず。:-))

どんな音楽が始まるのか緊張していたら、弦のpのざわめきの上にホルンが"B-Es-B, H-Es-B,  B-Es-B"とやり始めました。(Esのところは付点音符です。)、そして次にフルートが入って来て同じことを...

もうおわかりの方も多いと思いますが、この曲です。

http://www.youtube.com/watch?v=aVfPN40nuqI

しばらく聴いていたのですが全然面白くも何ともなく、レコードのジャケットをちょいと見たら、一時間以上の大曲とわかり、うんざりしたのでした。「何でこれが世界一美しい音楽なの?」

その後どうなったか記憶にありませんが、たぶんおしゃべりに夢中になって音楽は放っておかれたと思います。

さて、30年以上の歳月が過ぎ、ふとしたことから上記のメロディーと再会しました。その時感じたのは戦慄!変ホ長調から何度か転調し、そしてffに突っ込んで怒涛のごとく主題が奏でられるところでは眩暈を感じました。

しかし、何しろ長い作品ゆえ、全曲を聴き通すことはあまりありませんでした。

はじめて実演でブルックナーの交響曲を聴いたのは2011年3月、ベルナルト・ハイティンク指揮、ベルリンフィルの公演でした。この時は5番。これがまた何とも言い難い体験でした。それ以降、ちょくちょくとミサ曲などを含めてブルックナーの作品を聴くようになりました。

転調の時に感じる空中を浮遊するような感覚とか調性が決定した時の充足感とか、なだれうつ弦の波に全身をすくわれそうな恐怖と快感の入り混じった感覚とか、今まで知らなかった感覚が私の中に開発されたような気がします。

この3月にベルリンに滞在した時は、大雪に見舞われて、あまりの寒さ(最高気温がマイナス2度、最低がマイナス13~14度という日もありました。)に体がまいってしまい、気管支炎を起こして寝込みそうになりました。

そんなある夜、ホテルの部屋でぼんやりしていたら、何とも虚しくなってきて泣きたい気分になりました。

「これは、まずい!」

と思って、iPad miniを出してきてラジオがわりに使いました。テレビの番組は面白くないのでとりあえずラジオを聴こうとしました。ちょうど ブルックナーの交響曲第7番(マリス・ヤンソンス指揮!)の放送録音がありました。

広いバスルームにiPad miniを持って行ってかけたら完全に夢中になってしまいました。バスルームだと音がよく響きますね。まさか、入浴しながらブルックナーを聴くなんて危ないことはしていませんよ。--- 気がついたら昇天していたりして。(笑)

http://www.youtube.com/watch?v=QS-54s59iDQ 

こちらは同じヤンソンス指揮のバイエルン放送響の演奏。目下amazon.co.ukにCDを注文中です。

以後この一か月近くブルックナーを聴き続けています。

ブルックナーの「ロマンティック」を「世界一美しい曲」と呼んだヴォルフガング君の気持ちがようやくわかりました。でも、今頃になって!ヴォルフガング君に「ブルックナーは気持ちいい!」って大声で伝えたい気分です。

音楽を理解できるようになるにはそれなりの準備、そして音楽的成熟が必要なんですねぇ。

それを考えると演奏家というのは大変厳しい職業だと思います。円熟の境地に達した時には肉体の力が衰えている可能性もありますから。