2012年5月24日木曜日

「辛い」とは?

目下二年生のドイツ語の授業のひとコマで、ドイツの食事、食習慣について読んだり、インターネットで調べたり、話し合ったりしています。

昨日問題になったのは、「辛い」とはどんなことか、という点です。

あるアフリカ出身、ウィーン在住の人が、

「オーストリアの食事は何なんだ!全然辛くないじゃないか!辛さこそ大事なんだ。辛さが生きるためのエネルギーを与えてくれるのだ。」(大雑把な要約)

と言っているのを取り上げて、「この人が<辛い>と言っているのはどんな風味なんでしょう?」と問いかけてみました。

ちなみに「辛い」の元のドイツ語は"scharf"です。

私(神戸市出身)が子供の頃「辛い」と思ったものは、まずは東京のうどんの汁でした。
あれは辛かった。今なら「醤油辛い」と言いますけれど、当時の私は単に「東京のうどんは死ぬほど辛い」と言っていました。

それからぬか漬けを食べて、「今日のきゅうりはすごく辛い。」とも言っていました。これは「塩辛い」あるいは「しょっぱい」ですね。

にぎり寿司を食べて、そのわさびが鼻にツーンとぬけた時、「わぁ、辛い!」とも言いました。


時代とともに「辛い」の意味するところも少しずつ変わっているのかもしれません。


夫(東京人)にきいてみると、何だか私とは「辛い」のさす風味が微妙に違うようです。
彼は醤油ものを「辛い」とは言わないようです。しょっぱいものも「辛く」はないみたいです。

夫も私も共通に辛いと感じるのは「辛子」です。(あたりまえかな。)ラー油とか、ねり辛子とか、それこそ激辛カレーとか。(もっとも私は辛いカレーは食べないので、激辛カレーがどんな味か知りません。キーマカレーあたりで十分「辛い」です。)

学生さんにきいてみると、どうも彼らにとって「辛い」のは辛子味とか、強烈な調味料の入った「舌を刺すような」強い味のことをさしているようでした。塩辛いものを「辛い」とは言わないみたいです。ある留学生さんは「トムヤンクンが辛い」と語っていました。

で、結局、読んだドイツ語の文章の"scharf"という語は「スパイシーな」と訳すことにしました。

しかし、手元にある小学館の大きな独和辞典を参照すると、"scharf"にはたくさんの訳語がありましたが、「スパイシー」はありませんでした。

これだとドイツ語を英語に置き換えただけで、ダメな訳なんでしょうか?

そういえば、最近ドイツに約1か月ずつ3度ドイツに滞在し、ゲーテ・インスティトゥートの授業をたくさん参観させていただいたのですが、さまざまな国から来ている参加者に先生はこの「辛い」のようにちょっと抽象的な語について、「あなたの国ではどういうものをさしますか?」とよくきいておられました。